June 10, 2008
マーケティング・マイオピア
Marketing Myopiaという有名な論文がある。この論文は今から45年以上も前の1960年にハーバード・ビジネススクールの教授によって書かれた論文であるにも関わらず、そのエッセンスは今でも生きているから驚きだ。
Myopiaとは、「近視眼的な」という意味。あまりにも視野が狭いと訳した方がしっくりくるかもしれない。今日のビジネスにも見受けられるが、あまりにも事業主の視点に立つと、市場が見えなくなってしまい、その結果事業が衰退してしまうという事象を語っている。
例として、鉄道会社があげられている。産業の発展において、鉄道は非常に重要な役割を果たしてきた。しかし、鉄道会社は衰退したのだ。それは、鉄道会社は自分たちの事業ドメインを「鉄道」としてしまったからだ。利用者の視点で見れば鉄道であってもバスや飛行機であっても便利であればそれで良い話。つまり、鉄道会社は「輸送産業」と捉えるべきであったと。同様に映画産業も挙げられているが、これも「エンターテイメント産業」とすべきだ(今日のディズニーがそうであるように)。
特に技術にフォーカスする産業や事業では注意が必要であると思う。技術でフォーカスする場合は、製品やドメインにこだわるからだ。その卓越した技術を追求するあまり市場が見えなくなり、やがて自ら本来とは異なる事業ドメインを設定してしまったり、顧客のニーズをはるかに超える製品を世の中に送り込んでしまう(後者はクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」に近いと思う)
この2つに共通する事は、製品やサービスを生産するプロセスに特化するあまり、顧客を満足させるプロセスを厳かにしてしまう失敗である。もちろん顧客にしてみれば、製品やサービスがどのように作られるかなど全く無関心であり、それは重要項目では無い。提供側の使命は、製品の生産にあるのではなく、顧客に想像可能な価値を提供し、顧客満足を生み出す点にある。
この考えは現在のマーケティング論にも精通する部分がある。よくある「営業とマーケティングの違いは?」という問いに対して、答える事が可能になる。つまり、マーケティングは、市場(ニーズ)に始まって、顧客満足に終わる点(あえて言うなら営業は製品に始まって、売上に帰着する)。思わず企業の利益に追い回されるあまり忘れやすい概念である。
製品を中心に発想される事業はやがて衰退する。経営者は顧客を中心にした事業目的を定義すべきで、そのために重要なのはマーケティングである。
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